小さいからこそ輝く町~福島県矢祭町
いつかこの町のことを書こうと思っていた、いまがその時期かもしれない。
矢祭町は、個人情報保護の観点と、利用者が年10人足らずだったことから、
2002年7月、全国で最初に住基ネットから離脱を宣言したのであった。
福島県の矢祭という小さな町を知ったのは、
テレ朝の「サンデー・プロジェクト」で、議員報酬を日当制にした自治体としてであった。
町会議員の報酬を日当3万円×実働30日の、年額90万円とすることを自ら決議した、
とってもえらい町議会を追いかけた、ルポルタージュでこの町を知ったのであった。
矢祭町勢要覧の表紙には、「小さいからこそ輝く町 Small is Beautiful」とある。
「平成の大合併」で小規模町村が切り捨てられるとの懸念から、
「合併しない宣言」を世に先駆けて町議会で承認している、気骨のある自治体である。
小さいからこそ、住みやすい行政が提供できるというポリシーが立派である。
なにより分り易いし、スローガン倒れにならない実行力がこの自治体には備わっているのである。
1984年から6期24年にわたり矢祭町長を勤めた根本町長は、2選目以降は無投票町長であった。
多くは多選首長のもとでは、偏った利益誘導型悪政がはびこる構図が想像されるが、
記事の最後に書き上げた、この町長と町議会の立派な改革の一例をご覧いただきたい。
こういう幸せな自治体に住めば、税金を払う気になれるのである。
それにしても、こういう待遇でも、町長や議員や町職員になって、
住民のために尽くす見上げた人たちがいることに、感動する。
ここには、政治的駆け引きや党派を超越した、住民本位の政治や行政が存在する。
われわれは何者で誰のために何を為さねばならないのか、
政治家や役人だけでなく、総ての国民が今考えるときかもしれない。
候補者名をただただ連呼したり、有権者に土下座する候補者、
衆議院選挙が、バカみたいに見える。
こういうことに、私たちは税金を払っているのではないのだ。
【矢祭町の取り組みの一例】 ■議会定数を18人から10人へ削減。 ■町議員報酬を、月20万8000円から、年額90万円に減額 町職員の課長級の7割の日給見当で、1日3万円の日当制にする。 議員は、町議会や町の行事で年間の出勤日は30日程度×3万円で年額90万円。 ■町長・助役・収入役・教育長の報酬も課長と同等に 「どうみても我々は、多忙な総務課長ほど働いていない」として、 特別職3役と教育長の報酬を、課長級と同等にする。 ■その後、新しい収入役と教育長の就任はなく、職務を廃止する。 ◇徹底した経費削減の敢行 ■庁舎の清掃は、町長・助役・教育長も行う。管理職も、トイレ清掃を行う。 ■町長のお客には、町長がお茶を淹れる ■役場職員が消防員として、消火活動にあたっている。 ■図書館(矢祭もったいない図書館)設立のため蔵書の寄贈を一般に募り、 約1年で全国から約43万5000冊の寄贈を受けた。 ■税金滞納対策のため、職員自ら回収にあたり、 税金の大切さを職員は実感、夜は超過勤務手当のかからない課長クラスが担当。 ◇徹底した住民サービス ■役場窓口業務にフレックスタイム導入で、年中無休、平日業務は7:30 - 18:30。 ■保育所・幼稚園を一元化し、保育時間は平日7:25 - 18:45。土曜日は7:45 -12:45。 ■役場職員の自宅を出張役場として利用。町民は職員自宅で各種届出・納付可能に。 ■介護保険料は福島県で最も安く、公共料金は据え置いている、 福島県は繰り返し値上げを指導するが、独自路線を崩さない。 ・国民健康保険料 5万8000円/人 ・介護保険料 1940円/月 ・給食費 290円/中学生、240円/小学生 ・保育料 1万3200円/月 ・幼稚園料 4000円/月 ・水道使用料 1165円/10m3・月