二十歳のころに私が教育テレビで出会った、一級品の中の一級品が、
「真夏の夜の夢」であった。
その、日生劇場での録画を私は偶然に教育TVで観たのであった。
いわゆる、赤毛ものというか、新劇は、私の心にはフィットしない。
しかし、ピーター・ブルック演出のこの作品は、楽しくて新しくて、
こういうのも演劇なんだと、感動してしまった。
野田秀樹は、生意気にも高校生のときに生でこれを観たそうだ
高校のときは、偶然なんだけど、結構いい芝居に出会えたと思うのね。 その一つが、イギリスの演出家のピーター・ブルックっていう人が世界中をツアーした伝説の舞台で、『真夏の夜の夢』。おれは日生劇場で見て、演劇は本当にいいなあと思った。 多分こういうすごい舞台が演劇の世界にはいっぱいあって、どんどん見られるんだろうなと思って、とても幸せな気分になった。 ただその後、これに匹敵するような舞台にいくつ出会えたかというと、本当に数少ない。(「二十歳のころ」より)
私はこの野田の話を読んで、膝をたたいた。
野田演劇の原点のひとつが、この芝居だったのだ、なるほどなるほど。
だと言っている。なるほど。
劇音楽は、もちろんもちろん、若い頃に読んだシェイクスピアの戯曲に感動して、
曲をつけた天才、メンデルスゾーンである。
今年が生誕200年にあたり、秋にはメンデルスゾーンの演奏会が少なくないのである。
西洋では幻想的で不思議な事が起こるとされている。
劇中では、結婚式のシーンがあり、そのバックに流れるのが、
「結婚行進曲」なのである。
誰もが知る、あの「結婚行進曲」である。
私はその時、「ああ、こういう場面のための音楽なのか」とはじめて知ったのであった。
ピーター・ブルックは、白を基調としたシンプルな舞台装置の中で、
メンデルスゾーンの煌びやかな音楽をつかい、
伝統的な由緒ある劇団によるシェイクスピアの世界を表現してみせた。
すべての条件が、揃うこともあるんだ、
それと出会えて、二十歳のころの私は、幸せ者であった。
ご紹介のCDは、シューベルトのロザムンデも入っている、
1000円で、たっぷり何度でも、
おそらく200年は楽しめると思われる。