「夜色楼台図(やしょくろうだいず)」
雪が降り積もった京都の夜の景色を、与謝蕪村が描いた傑作である。
先ごろ国宝に指定された。
東山三十六峰に降り積む雪と、
その峰々に抱かれた京都の町の静かなたたずまい。
蕪村は、家々の灯りを表すため、
ほんのわずかな朱をところどころに入れて仕上げている。
暗黒の空と風景画のなかに、
蕪村はそのわずかな朱をもって、
人々の暮らしを表現したのである。
紙本を通り抜けて、上下左右に延々と京の夜景が続いていくような、
壮大な実に広がりのある表現方法は印象的で、
作者蕪村の、スケールの大きさを再認識させられるものである。
また、母親が待つ家を持たなかった彼の、
憧憬や哀愁もそこには見えてくるのである。
私はこの絵を見て以来、
遠くに見える大きなマンションや民家の夜の灯りが、
とても温かいものに感じられるようになった、
今まで見ていた夕景が変わって見えるようになった。