「鳶・鴉図(とびからすず)」(京都北村美術館蔵)
風雨がたたきつけるように襲ってくるなか、
じっと嵐が通りすぎるのを待つ鳶(とび)。
暗闇をしんしんと舞い落ちる雪の中、
身を寄せ合ってじっと朝を待つのは二羽の鴉(からす)。
晴れた大空を自由に飛び交う鳥たちを、
このようにじっと耐える姿で描いた与謝蕪村。
大阪に生まれた蕪村は、幼少期は母親の郷でもある与謝の地で過ごし、
母親が亡くなって天涯孤独の身で日本各地を周遊し、
晩年は京都に居を構えた。
「鳶・鴉図」は、「謝寅(しゃいん)」の落款を有す蕪村晩年の作品である。
俳句を作りながら諸国を鳥のように自由に歩いて来た自分を、
実はずっと風雪に耐えてきた人生だったのだよと、
晩年の蕪村は言いたかったのかもしれない。
鳶の図は、風が見える。
鴉の図は、白く塗り残した舞う雪に、芸術の一瞬を見ることができる。
残された俳句と俳画と絵画から、
この孤独な天才の創作活動を通じた生涯が見えてきて、
感涙の50分番組であった。