遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

色絵藤花図茶壷/野々村仁清

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「色絵藤花図茶壷」(国宝) 野々村仁清(にんせい)


京都の北部に美山という美しい里がある。

日本海への釣行に美山の山道を通りかかった深夜、

ゆったりとふさふさとした尻尾を振りジャンプしながら、

私の車の前を駆け抜けた大きなキツネに出会ったことがある。

おそらく、いまだにその地名にたがわず、

美山は大自然の残る美しい里山が残っていることと思う。


野々村人仁清は、そんな美山の地に生まれ、江戸初期に京に上り、

京都の粟田口で修行を積み仁和寺に窯を開いたという。

この仁和寺の「仁」と本名も清右衛門の「清」で、

「仁清」の印銘を使用した。



何点かの仁清の作品を常設展示で見つけた。

何点かの茶碗だったような記憶があるが、

その姿かたちはよく憶えていない。


MOA美術館にのこる「色絵藤花図茶壷」(国宝)は、

ふくよかなラインを持つ大ぶりの茶壷で、

さすがは「ろくろの名手」の作品。

コンピューターにこのラインは引けないと思う。

また、かなりの薄手に仕上げられたものらしく、軽やかさも感じる。


形が完璧なうえに、色がまた華やかで気品がある。

仁清の色は当時の各地の陶工に強いインパクトを与えたという。


「国宝」と言われれば、それだけで無条件降伏してしまう私は、

この作品が収められたガラスのケースの周りを、

クマのように何度も歩いていた。