録音:1968年7月 スネイプ、1961年7月 ロンドン
昨年の秋ごろだったか、ちょうどそのころ終ったばかりの、
2008年度の日本音楽コンクールを追いかけたドキュメンタリーを見た。
コンクールの各部門ごとにたっぷり時間を配分した、
実に面白いドキュメンタリー番組だった。
予選を勝ち抜いた本選出場者たちの、日常の音作りを追いかけたり、
練習風景を紹介したり、本選の演奏ハイライトをたっぷり見せてくれた。
どの部門の本選の演奏を聴いても、素人の私には演奏の良し悪しの差をつけられなかったが、
そんな激戦の中、チェロ部門の第1位は奈良県の若き男子(高校1年生)だった。
そのチェロ部門の本選の課題曲が、
はじめて聴くその美しい調べにうっとりとして、速攻でこのアルバムを購入した。
アルペジオーネというのは、ギターのように6本弦でネックにフレットがついた、
チェロ様の楽器だそうで、この曲はその楽器のためのソナタである。
アルペジオーネという楽器は事実上消滅しているようであるが、
この楽曲は消滅しないでいまも息づいている。
恥ずかしながら私がそのことを知ったのは、つい数ヶ月前なのだが、
それはともかく、シューベルトのこの名作はきらきら輝いて生き続けている。
例によって、なぜこの1枚を買ったのかよくおぼえていないが、
1960代の録音といささか古い音にもかかわらず、
シューベルトの官能的でロマンチックな旋律と、
絶妙なるコンビネーションが、聴く者の胸を強く打つ。
ブリテンは20世紀の大作曲家であるが、ピアノの名手でもあったようだ。
偶然見つけた、小さくて目立たない曲なのだけど、
昨年の秋以来、夜な夜な小悪魔のように私の心を捉えて放さない。
とてもとても良い作品と演奏で、「おまけ」という言葉を撤回する。
この185年前のシューベルトを一度聴いていただきたい、
時空を超えて、心が洗われるはずである、
生きる勇気を与えてくれるはずである。