遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ホームレス歌人/公田耕一

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昨日の朝日新聞の夕刊の<素粒子>に、

 

彗星のごとく朝日歌壇に登場「ホームレス・公田耕一」。

経歴一切不明。最底辺より時代を告発せんとしているよ、彼は。

 

という一文を見つけさっそく調べてみる。


昨年末に、朝日新聞に掲載される読者投稿の短歌欄「朝日歌壇」に

 

  (柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ

 

という歌で初登場以来、知る人ぞ知る存在なのだという。

 

この歌は同時に二人の選者が採用した。

 

「柔らかい時計」とはダリの有名な作品で、

 

「住むところのある人間とホームレスの時間の流れ方の違い」を表現したものだろうと、

 

紹介されている。

 

この公田氏、ほんもののホームレスのようなのである。

 

その後の入選歌は以下のとおり。

 

 ・鍵持たぬ生活に慣れ年を越す今さら何を脱ぎ棄てたのか(12月22日)
 
 ・水葬に物語などあるならばわれの最期は水葬で良し(1月5日)
 
 ・パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる(1月5日)
 
 ・日産をリストラになり流れ来たるブラジル人と隣りて眠る(1月19日)
 
 1月5日詠の「水葬」は、戦後を代表する歌人塚本邦雄の第1歌集『水葬物語』を

意識したもので、公田氏の短歌の素養がうかがわれる。


さらに、1月26日にいたっては、選者3人が採用するという偉業を達成。


 ・親不孝通りと言へど親もなく親にもなれずただ立ち尽くす

 これは、佐佐木幸綱、高野公彦、永田和宏の3人の撰者が同時に採る秀作で、

これを永田氏は「親が生きていてこその親不孝だが、『親にもなれず』なる四句に

万感の思いがある」と評した。


ちなみに昨日2月16日の朝日歌壇にも、「(ホームレス)公田耕一」の名前を見つけた。

 

コンスタントに入選をしているようなのだ。



最後に、入選歌ではなかったようだが、私の涙腺を緩ませて仕方なかった歌を紹介したい。


  百均の「赤いきつね」と迷ひつつ月曜だけ買ふ朝日新聞


「朝日歌壇」は、毎週月曜日に朝日新聞に掲載されるのである。