遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

チャイルド44/トム・ロブ・スミス

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チャイルド44 (上・下)  トム・ロブ スミス   田口 俊樹 (訳)  (新潮文庫)


「WEB本の雑誌」というサイトの「今月の新刊採点」で、いつも面白本を探している私。

「チャイルド44」は、5人の評者のうち4人が5つ星をつけていたので迷わず購入。



作品の冒頭に物語の伏線として1933年のソビエトが登場。

当時のソビエトは、未曾有の大飢饉に見まわれ、飢えのため村人が死亡して、

村そのものが消えてしまうといった事態が、連邦中で見られた。


それから20年が経ち、1953年のソビエトがこの作品の舞台となる。


主人公は、国家保安省の捜査官レオ。

彼は第二次世界大戦のヒーローで、ナチを粉砕した直後の記念写真、

そのハンサムな雄姿の写真が、プラウダなどの第一面を飾った伝説を持つ。

戦争の英雄は、飛び切り美人の妻を持ち、

いまや国家スパイを摘発しまくる超エリートに登りつめ、

なに不自由のない生活を送っていた。


しかし、飛び切り美人の妻がスパイの容疑をかけられ、

あろうことか、レオがその摘発の任に当たることとなる。


これ以上、詳細なストーリーは記せないが、

そのご、主人公レオはなぜか国家保安省のエリート捜査官から身を落とし、

地方の一警官になる。

レオとその妻が、とある殺人事件の不自然さに疑問をいだくところから、

夫婦二人の事件解決のための旅が始まるのであった。


ソビエトでの実際の事件をもとに、トム・ロブ・スミスがフィクションに仕立て上げた。

彼のデビュー作品でもある。


この作品は、リドリー・スコットが映画権を獲得したようで、

翻訳本は二十数カ国で出版されるらしいのだが、

スターリン時代のソビエトとは訣別したはずのロシアでは、発禁となったようである。


「発禁」となるような作品が、面白くないはずがない、

読むのが遅い私ですら、上下巻を一気に読みきった。



このミステリーがすごい!」(2009年版・海外編)で第1位を獲得したようでもある。