クイズ・ショウ(1994)
「クイズ・ショウ」は、
1950年代後半、アメリカNBC放送の大人気クイズ番組、
「21」という番組の舞台裏を描いた、
実話に基づいた社会派ドラマである。
このクイズ番組は、TV局とスポンサー(マーティン・スコセッシ!)が、
視聴率をコントロールしていた。
クイズ回答者は、視聴者参加であり、
1対1の対決形式で勝ったほうが毎週出続けることができる。
賞金は、勝ち続けると途方もない金額にはね上がって行く。
ある時期、風采の上がらないジョン・タートゥーロが勝ち続けていたが、
スリリングなクイズ番組は、視聴率は悪くないものの、右肩上がりではなくなっていた。
そんななか、TV局のスタッフが、
若くてハンサムで家柄も申し分のない大学講師レイフ・ファインズに、
週給86ドルの若き講師に、目を留める。
番組プロデューサーは、タートゥーロにわざと負けて、
ファインズに勝たせろと詰め寄る。
1955年のアカデミー賞作品賞を尋ねるので、
「波止場」と間違えろと強要する。
番組を下ろされたタートゥーロは、裁判所に駆け込み、
米国議会の立法管理小委員会の調査官ロブ・モローが動き出す。
当時開局間もないTV局は、この小委員会の監督下にあった。
調査官役のロブ・モローがとてもいい。
ハーバードを主席で卒業した若き役人を演じ、
世の中のあらゆる不正を許せないタイプの若者。
この、クイズ番組は議会の公聴会が開催され、
関係者が次々と召喚されるという一大スキャンダルになっていく。
調査官モローは、その後十週を超えて勝ち続け、
TIMEの表紙にもなったファインズに近づく。
ファインズの不正を確信しながら、
「ワシントンは害虫だらけの政治的沼地」だと吐き棄てる父親(詩人で大学教授)
を核とした、まばゆいような知識人一家の食事に同席し、
ファインズの育ちの良さも目の当たりにすることになる。
ファインズ「もし目の前に金を積まれて、
インチキ番組に出るよう頼まれたら?」
モロー 「もちろん断わる」
ファインズ「有名になり5万ドルの仕事も転がり込むんだぞ」
モロー 「断わる」
モローは、ファインズを公聴会に召喚しないことを腹に決めた。
良家に育ち、大学講師の職に就いてもなお、
悪魔に魂を売るのは、悪魔の仕業だということなのか。
「普通の人々」「リバー・ランズ・スルー・イット」
で、家族愛をケレンなく淡々と描いたレッドフォード。
テーマに大スキャンダルを扱ったこの作品でも、
不思議と同じ風が吹いている。
ロブ・モローとレイフ・ファインズにその爽やかな風を感じるのである。