遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

クイズ・ショウ/ロバート・レッドフォード

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監督: ロバート・レッドフォード
脚本: ポール・アタナシオ
出演: ジョン・タートゥーロ
    ロブ・モロー
    レイフ・ファインズ
    ポール・スコフィールド
    デヴィッド・ペイマー
    マーティン・スコセッシ


「クイズ・ショウ」は、

1950年代後半、アメリカNBC放送の大人気クイズ番組、

「21」という番組の舞台裏を描いた、

実話に基づいた社会派ドラマである。


このクイズ番組は、TV局とスポンサー(マーティン・スコセッシ!)が、

視聴率をコントロールしていた。

クイズ回答者は、視聴者参加であり、

1対1の対決形式で勝ったほうが毎週出続けることができる。

賞金は、勝ち続けると途方もない金額にはね上がって行く。


ある時期、風采の上がらないジョン・タートゥーロが勝ち続けていたが、

スリリングなクイズ番組は、視聴率は悪くないものの、右肩上がりではなくなっていた。

そんななか、TV局のスタッフが、

若くてハンサムで家柄も申し分のない大学講師レイフ・ファインズに、

週給86ドルの若き講師に、目を留める。


番組プロデューサーは、タートゥーロにわざと負けて、

ファインズに勝たせろと詰め寄る。

1955年のアカデミー賞作品賞を尋ねるので、

「波止場」と間違えろと強要する。


番組を下ろされたタートゥーロは、裁判所に駆け込み、

米国議会の立法管理小委員会の調査官ロブ・モローが動き出す。

当時開局間もないTV局は、この小委員会の監督下にあった。



調査官役のロブ・モローがとてもいい。

ハーバードを主席で卒業した若き役人を演じ、

世の中のあらゆる不正を許せないタイプの若者。


この、クイズ番組は議会の公聴会が開催され、

関係者が次々と召喚されるという一大スキャンダルになっていく。


調査官モローは、その後十週を超えて勝ち続け、

TIMEの表紙にもなったファインズに近づく。

ファインズの不正を確信しながら、

「ワシントンは害虫だらけの政治的沼地」だと吐き棄てる父親(詩人で大学教授)

を核とした、まばゆいような知識人一家の食事に同席し、

ファインズの育ちの良さも目の当たりにすることになる。



ファインズ「もし目の前に金を積まれて、

      インチキ番組に出るよう頼まれたら?」

モロー  「もちろん断わる」

ファインズ「有名になり5万ドルの仕事も転がり込むんだぞ」

モロー  「断わる」



モローは、ファインズを公聴会に召喚しないことを腹に決めた。

良家に育ち、大学講師の職に就いてもなお、

悪魔に魂を売るのは、悪魔の仕業だということなのか。


「普通の人々」「リバー・ランズ・スルー・イット」

で、家族愛をケレンなく淡々と描いたレッドフォード。


テーマに大スキャンダルを扱ったこの作品でも、

不思議と同じ風が吹いている。


ロブ・モローとレイフ・ファインズにその爽やかな風を感じるのである。