遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

カリートの道/ブライアン・デ・パルマ

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カリートの道
Calito's Way : 1993年




アル・パチーノがイタリア系ではなく、

プエリトリコ系ギャング、薬の売人を束ねる大物を演じる。

正確に言うと、悪から足を洗いたい元ギャングを演じる。


恋人アン・ミラーと、

パラダイス島でレンタカー会社を経営することをひたすら夢見て、

堅気の仕事を続けているのだが、厄介ごとが次々訪れる。


その疫病神のひとりが、

パチーノを刑務所から出してくれた恩人、弁護士ショーン・ペンである。

アルコールとコカインとマネーに依存するとんでもない弁護士で、

若いペンは、いつものごとく体当たりでその狂気を名演する。


「(ペン)弁護士に近づかないで」と、パチーノはアン・ミラーに懇願される。

恋人の声と、同じ気持ちの観客である私たちの気持ちをパチーノは聞き入れず、

仁義をつくそうとする。


実は、パチーノの行く末はすでに映画の冒頭で、

デ・パルマが描いている。

観客は、映画の結末を頭に入れて、145分の物語に付き合うことになる。


スリリングな展開が、観客の心を掴んで放さない、

デ・パルマの手腕がそうさせるのである。

パチーノとペンの凄味が我々を引きつけるのである。


グランド・セントラル駅での階段、エスカレーターのある風景の中で、

イタリア・マフィアとたった一人で対峙するパチーノ、

けだし名場面である。

同じデ・パルマ作品の「アンタッチャブル」で、

階段を背景にケビン・コスナーがカポネ一家と対峙した場面を思い出す。


こういうカッコイイ、オシャレなアクション・シーンは、

デ・パルマ作品の真骨頂である、彼の才能のあらわれである。


映画の結末は、観客にすでにインプットされたものであった。


しかし、そのあとのエンド・ロール(エンディング・クレジット)の背景の、

夕陽の中のアン・ミラーのシルエットは、

それを見た観客に感動のハッピー・エンドを提供してくれる。


エンド・ロールが始まっても席を立たないよう、

デ・パルマ監督が教示してくれている。


70年代のヒットソングも、作品の中で楽しめる一作となっている。