遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

モンテ・クリスト伯/ケヴィン・レイノルズ

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モンテ・クリスト伯  The Count of Monte Cristo

2002年/米=アイルランド
【監督】ケヴィン・レイノルズ
【原作】アレクサンドル・デュマ
【出演】
ジム・カヴィーゼルエドモン・ダンテス
ガイ・ピアース/フェルナン・モンデーゴ
ダグマーラ・ドミンスクメルセデス
リチャード・ハリス/ファリア司祭



まったく予定のない私のゴールデンウィークは、

我が家のしょぼいホームシアターで映画を楽しもうと、

レンタルDVDを物色。


お目当ての映画は特になく、

適当に親子4人で15枚のDVDをレンタルする。


そのなかの1枚が「モンテ・クリスト伯」。

小学生のころ従兄弟に奨められて読んだ、

モンテクリスト伯の翻訳「巌窟王」の印象は強烈で、

岩波文庫の全7巻をいつか読みたいと思っていたにもかかわらず、

ジャケットにガイ・ピアースを見つけ、DVDを借りてしまった。


原作は「三銃士」のアレクサンドル・デュマ(1802~70)。

デュマはアフリカ系の血が混じっており、

当時のフランスでは虐げられた存在で、

この「モンテ・クリスト」にはその不条理な境遇を、

主人公のエドモン・ダンテスに投影しているように感じる。




時代はデュマが生きた19世紀前半。


物語前半は、エドモンが裏切られて無実の罪で投獄され、

後半は失意から起死回生の復活を成し遂げるという、

あっけらかんと単純明快な筋書き。

古今東西共通のあっけらかんさが、

小学生の私の心を躍らせたのである。


ストーリは伏せるが、

ロビンソン・クルーソー」「宝島」「黄金虫」

「長ぐつをはいた猫」をまぜこぜにしたような、

血湧き肉踊る胸のすく筋書きである。


ただ、監獄でファリア司祭と出会い教えを受け、

人間としての尊厳を身に付けていく過程は、

スリリングなストーリーとは別に、重厚感が漂う。

このダンテスの成長過程が、物語になかったならば、

世紀を超えて人々に支持されなかったであろう。


映画は時代をよくとらえており、

長編小説の空気を損なうことなくコンパクトに編集されていた。


私のお気に入りのガイ・ピアースは、

実に個性的な役柄をクールに演じきっている。


ファリア司祭役のリチャード・ハリスは、

温かく大きな演技で、秀逸であった。



何気なく借りたDVDではあったが、

大いに楽しめた。