醍醐桜
里山のシンボルツリー、桜。
農家の庭先から、棚田や段々畑から、
どこからでも見えるシンボルツリーが桜。
園芸番組を見ていて、講師の方が、
「種を蒔く時期は、ソメイヨシノが咲いたころ」とか、
「植え付けの時期は、八重桜が散ったころ」などという言葉を聞いて
はたと思いあたった。
桜は農耕のための目印なのだと。
毎年毎年、春は同じ速度でやってくるわけではない。
寒さが続いたり、暖かさが例年と違ったり、
そんな気候のバロメータとなるのが、
里山の小高い丘に一本大きく咲く桜の花なのである。
自分達の丘の桜の開花が、
その年の農耕の事始になるのである。
里山の人たちは、丘の上の自分達のシンボルツリーの合図で、
畑を耕し始めたり、種籾を蒔いて苗床を作り始めるのである。
もちろんただ眺めていても素晴らしい花なのだけど、
農耕のためのシンボルツリーとなる、
大切な神様のような花なのである。
画像は岡山の真庭の樹齢700年と言われる「醍醐桜」、
もうすぐこの桜に続く道路は、この花を見に来る人たちのクルマで、
大渋滞になる。
700年もの間、里山の棚田や畑のために一歩も動かず、
生きつづけてきたことが素晴らしい。