仏像の中の頂点が大日如来で、それ一体で宇宙をあらわすという。
この世のすべてのものに知恵の光を与えてくれ、
その永遠の光の照度は太陽(日)を大きく上回ることから、
「大日」と名付けられる。
東の横綱運慶の作品ともなれば、
13億円の値が付いたとしても驚くには値しないか。
端正なお顔の見事な仏像である。
胸の前にあげた左拳の人差し指をのばし、
右の拳をもって握る「智拳印」を結んでいるが、
肩から腕、拳へのラインへの美しさには、
さすがに脚フェチの私でもため息が出る。
外資系に勤める会社員である出品者は、取材に応じてかく言う。
「普通のサラリーマンが真面目に働いていれば、
買うことのできる価格で手に入れた。
しかしその存在の重さに絶えかねてオークションに出品した。
文化庁に買い上げをオファーしたが、価格で折り合わなかった」
元は足利家の栃木にあった樺崎寺(廃寺)の本尊であるこの大日如来は、
建久4年(1193年)ころの作品といわれるが、
今日に至るまでの長きに渡り、保存状態もほぼ完璧で、
どういう経緯でこの出品者に渡ってきたのだろうか。
私は落札価格よりもこちらの方に興味がある。
とにかく、三越が代理で買い戻してくれた。
海外流出すると踏んでいたので、めでたしめでたし。
いまに伝わってもなお金色に輝くこの如来に、
どこかで出会えればなお嬉しい。