NINJAとはノー・インカム、ノー・ジョブ・アンド・アセットの略で、
収入がなく、職も資産もなくても借りられるローンである。
正確に言えば、そういう人たちにむりやり貸し付けたローンが、
サブプライム・ローンの典型的なものだったわけである。
返せないと分かっている人に金を貸すのは、
どこかの国のサラ金とさもよく似ている。
2000年あたりから始まった、米国の住宅バブルに乗じて、
かの国の住宅専門金融会社が、
サブプライム層に住宅ローンを貸しに貸しまくったようすが、
この本を読むと手に取るようわかる。
我が国の住宅バブルの教訓はまったく生かされず、
それ以上の悲惨な状況になっていったさまが、
平易な文章と図でわかりやすく、よく書かれている。
著者は高校生にわかるように書いたとあとがきで述べているが、
なるほど、私のような素人にも有難き平易さであった。
担保となる住宅がどんどん値上がりして、
ローンが返せなくなっても担保を売却すれば問題ないはずだったのだが、
2006年をピークに住宅価格が上がらなくなって以降、
サブプライム問題が顕在化し始める。
ただ、問題の核心は、このやるせないローンが、
貸し手と借り手の当事者間だけの問題ではなくなって、
「証券化」というお化粧を施して、
全世界に売り出したから、
あるいは、売り出そうとしたから、
サブプライム「問題」が金融ショックを生み出した。
ここが最も核心部分である。
全世界にばら撒かれた、その残高は80兆円にのぼるようである。
売り出されて買った人も、
売り出そうとしてかなわなくなって自分で在庫を抱えてしまった人も、
世界同時株安で、株を持っている人たちも、
少なからず痛手を受け、我が国の大銀行や大証券会社も、
大変な損害を受けている。
問題になる前にこういう本が出ていれば、とも思うが、
問題になる前に出版されるわけがなく、
第一に出版されても誰も読むはずがないのである。
私はビジネス書や、「風が吹けば桶屋が儲かる」(?)みたいなタイトルの本や、
「成功の近道はこれだ」的「部下の掌握術はこれだ」的な本は、
くだらなくて時間の無駄なので読まないが、
この新書は、ドキュメンタリーのごとく面白く読めた。
悪徳商法に騙されないために、ぜひ読まれたいと思う。