という記事を書いた2日後、
市川は帰らぬ人となった。
東京三部作は、
たった今私が独断で「東京三部作」と命名した。
市川作品のなかで、
私のベスト1は、「東京オリンピック」である。
1964年(昭和39年)、
少年だった私には忘れえぬ時代となった。
映画は、冒頭、変わりゆく東京を、
伝えていた。
淡々と伝えていた。
スクリーンいっぱいに拡がる富士の裾野を行く、
聖火の煙たなびくシーンは、殊に印象的であった。
体操のベラ・チャスラフスカ、遠藤幸雄、
柔道のアントン・ヘーシンク、
陸上100メートルのボブ・ヘイズ、
ボクシングのジョー・フレイジャー、
女子バレーボールの東洋の魔女たち、
彼らスーパースターをクローズアップするのみならず、
市川は名もなきアスリートを追いかけもした。
途上国からやってきた若き陸上選手の、
競技期間中の東京での孤独と不安の日々は、
まるで出稼ぎで未知の国に来た青年のようでもあった。
この映画の隅から隅まで楽しめた私は、
夢多き少年の日々を重ねていた。
いい時代でもあった。
そういう時代の光と音と空気を、
市川崑は見事に捉えていた。
この作品の試みは、いまだに力を持っていると思うのである。
謹んでご冥福を祈りたい。