遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

東京裁判/小林正樹

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小林正樹監督の記録映画「東京裁判」(1983年製作)をTV鑑賞。


折しも、安倍首相は東京裁判判事のひとり、インドのパル判事の長男と面会した。


asahi.com より)
インドを訪問中の安倍首相は23日昼(日本時間同日午後)、極東国際軍事裁判東京裁判)で連合
国側判事を務めたインドの故ラダビノッド・パル判事の長男プロサント・パル氏(81)とコルカタ
市内で面会した。
首相は「判事は多くの日本人から今も尊敬を集めている。ご遺志は日印関係を発展させることだった
と思う」と述べた。

パル判事は東条英機元首相ら25人のA級戦犯について、全員の無罪を判事11人の中でただ一人
主張した。

東京裁判について、首相は昨年10月の衆院本会議で「我が国は裁判を受諾しており異議を述べる
立場にない」と答弁。
ただ、かつて裁判のあり方に疑問を唱える立場を取っていたため、今回の面会が注目されていた。 

22日のインド国会での演説では「極東国際軍事裁判で気高い勇気を示されたパル判事は、たくさん
の日本人から今も変わらぬ尊敬を集めている」と評価。

ただ、日本政府関係者は「判事は戦中の日本軍の行為は厳しく批判している」として、今回の面会が
東京裁判に疑念を示したり否定したりすることにつながるものではないと強調している。


この5時間にも及ぶ記録映画は、まさに昭和を語る記録映画でもあった。

昭和6年の満州事変から昭和20年の8月15日の終戦までを「おさらい」できるなら、

5時間は長すぎない。



市谷の旧陸軍士官学校大講堂を法廷にしたので、

極東国際軍事裁判は、東京裁判と称される。


その市谷で、満州事変に始まる戦争のあらゆる場面で指揮を執り、

関わったA級戦犯25人が公開裁判で裁かれたのであった。


戦犯の弁護人は、アメリカやイギリスの弁護士が勤め、

戦勝国が敗戦国の個人を裁くのは間違いだと訴える。


戦犯たちの行為は断じて許されないと私は思うが、

ただ、彼らの弁護人が「これは間違った裁判だ」と主張し続ける態度に、

少なからず感動した。


パールハーバー攻撃を指揮した首相や参謀を裁くのなら、

原爆を落とせと指令した大統領はなぜ弾劾されないのか、

私はその大統領の名を知っている」と

判事たちに迫るアメリカ人の弁護人の勇気と迫力に、

感心した。


この裁判が、全て日本人の裁判であったら、

つまり、判事も検事も被告人も全て日本人であったら、

正しい裁きだと後世の私たちも幾分納得できたであろう。


しかし判事は、オーストラリアの裁判長をはじめとした、

戦勝国と被害を受けた国家の代表判事たちであった。


その中、インドのパル判事は25人全員の無罪を主張したのであった。

彼は、戦犯たちを許したのではなく、

この東京裁判は無効だと言いたかったのだと思う。

つまり、戦犯たちの弁護人達の主張と同じ意見なのである。



なぜいまごろ、安倍首相はパル判事の長男に会いに行ったのだろう、

靖国神社にお参りするのと似た感覚なのだったら、

あまりにも軽薄だといわざるを得ない。


A級戦犯は、当時の日本を総自決国家に作り上げた主犯である、

その犯罪の大きさ重さは、この映画の戦争記録フィルムにも投影されている。

しかし、東京裁判の有りようは正しかっただろうかと問われれば、

答えはノーであろう。


小林正樹の思いも同じなのではなかろうかと私は思う。