遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

荒ぶる血/ジェイムズ・カルロス・ブレイク

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 荒ぶる血  ジェイムズ・カルロス・ブレイク (文春文庫) 



土曜の昼下がりから夕方まで、

我が家の、まだソファのないリビングの床に転がった物体ひとつ。


私の身体である。


金曜日は久々に集まった男6人、

6時30分から10時30分まで、居酒屋で飲み食い喋る。

途切れなく、まぁよく喋るグループであった。


ただでさえ疲れている週末、その疲れもあってか、

土曜日は午睡。


娘はその頃、センター試験と格闘中、

娘の出来心配10%、私のぐうたら度から派生する後ろめたさ10%、

なんだか説明できないもやもや10%。


だから、午後の私は、100%幸せ気分であったわけではない。



とにもかくにも午睡の後、ソニー・ロリンズを流しながら、

読みかけのミステリを読了。


その読みかけミステリは、ジェイムス・カルロス・ブレイクの「荒ぶる血」。

年末のNHKBS「週刊ブックレビュー」のミステリ特集で紹介されたお奨め本である。





恋人(ダニエラというメキシコ生まれのとびきりの美女)を追って、

2人の相棒と荒野を駆る主人公ジミー・ヤングブラッドの行く末が気になり、

頁を繰る。



ジミーとブランドとLQの3人組は、世間で言うごろつきの悪党であるが、

読み手から見たら、別の悪を滅ぼし、権力に楯突くヒーローたちなのである。

しかも、タフで愉快なキャラクターなのである。


読み手に賛同さえ得られれば、悪党3人はビビッドに行間を駆け巡るのである。



3人の会話が、お互いを毒づきあう会話が、

下品ではあるが哲学的で、すこぶるオモシロイ。

毒づくけれど相棒を傷つけないところが、すばらしい。


莫迦な3人組だけれど、シリアスな仕事ぶりが読み手をひきつける、

後半のクライマックスに、有能さを立証してくれる。




「スタイリッシュなノワールと荒々しい活劇小説を融合させた

掛け値なしの傑作」と、売り手の言葉。


メキシコ生まれの作者が、

アメリカとメキシコ国境を舞台に、

荒野のハードボイルドを展開してくれる。



干草の匂いと土埃がよく似合うハードボイルドに、乾杯。