「 ひなげし 」 クロード・モネ 1873年
( オルセー美術館 蔵 61.0cm×73.0cm )
ちょうど今頃の季節であろうか、光溢れる南仏の丘に咲くひなげし。
太陽がいっぱいの、その中を歩くは、作者モネの最愛の二人。
妻のカミーユと息子ジャン。
私はかつて戯れにこの絵を模写したことがある。
中学校までの美術で絵を描いただけの、絵の心得のほとんどない私が、
しかも、水彩絵具で模写したので、出来上がりは…。
草原や遠景や空と、遠くのカミーユとジャン、近くまで来たカミーユとジャンで、
何とか30点は取れたような気がしたが、
赤いひなげしの色を置いたとたん0点になってしまった。
描くと見るでは大違い。
しかも、完成した絵画を模写することと、実風景を絵にすることとは、
まったく異なる作業である。
オリジナリティとは、人が創造力を発揮することである。
音楽という芸術は、作曲家の楽譜にも、演奏者にもオリジナリティが在るが、
絵画や彫刻や工芸や文学は、作者の手から作品がリリースされたところで、
作品は完成される。
「ひなげし」は、陽光に照らされた自然の素晴らしさと、
作者モネの幸せな穏やかな心象風景が感じられる。
モネが、最愛の人たちと、大自然を抱きしめた作品である。
模写をすれば、そういうことは、見えてくる。