1963年(昭和38年)、朝日新聞社は大阪本社創刊85年・
東京本社75周年記念の1000万円懸賞小説を募集、
その受賞作が三浦綾子の「氷点」であった。
当時の1000万円というのは、気の遠くなるような莫大な賞金であった。
この小説は、東京オリンピックの熱冷めやらぬ1964年12月から、
朝日新聞で連載が始まり、1966年に同社から出版されベストセラーとなった。
また、同じく1966年にテレビ朝日系(当時のNETテレビ)でドラマ化されたこの作品は、
いわゆる「風呂屋がカラになる」ほどの大ヒットとなり、
平均視聴率は30%を超え、最終回の視聴率は42.7%だったそうである。
娘陽子をいじめる母親夏枝役の新珠三千代は、きっと日本中の視聴者から精神的バッシングを受けたであろう。
後に「細腕繁盛記」でいじめられ役を演じたが、それでもチャラにならなかったであろう。
陽子役は、安田道代、島田陽子などが演じている。
中学生の私は、「氷点」はメロドラマ、よろめきドラマだと思っていた。
それから「氷点」を遅ればせながら読んだのであった。
少し前、「塩狩峠」と「氷点」を職場の若い連中に薦めたところ、
痛く感動したようであった。
妻夏枝に対する夫啓造の冷たさ、娘陽子に対する母夏枝の冷たさ。
氷のような心は、どのように生まれてくるのか、
そのような心は氷解することはあるのだろうか。
タイトルを「氷点」としたときに、この小説の骨格を確かなものにしたのだろうと思う。
今年の冬、「氷点」はまたドラマ化されるようである。
それまでに、「氷点」「続・氷点」を読まれることをお奨めする。
私には夏枝をバッシングする感情は、微塵も湧いてこなかった。
神は人間を創ったときに、完璧にしてくれなかった、
少し試練を注入して、考え進歩する余地を残してくれた。
そのことを、この小説が教えてくれたからである。
読みやすい文体の行間に、原罪を感じられたい。
【原罪】
アダムとイブが禁断の木の実を口にし、神の命令に背いた罪。
アダムの子孫である人類はこの罪を負うとされる。
アダムとイブが禁断の木の実を口にし、神の命令に背いた罪。
アダムの子孫である人類はこの罪を負うとされる。