遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

桐や藤の花咲く5月の山

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朝、通勤時にマイカーのウィンドウ越しに見える雑木山の美しいこと。

芽吹いたばかり広葉樹の山肌は、さまざまな緑・翠・碧・みどり。


緑色(りよくしよく)・翠緑(すいりよく)・深緑(しんりよく)・草色(くさいろ)・萌葱(もえぎ)色・柳色・

松葉色・利休色・オリーブ色・グリーン・エメラルド・翠色(すいしよく)・青翠(せいすい)・

万緑(ばんりよく)・新緑・青葉が渾然一体となって、文字にあらわせない素晴らしさである。


そのみどりに絡まる、自生の「藤の花」がまた見事。

その豪華さは、人の手を加えた藤棚の比ではなく、ぐんぐん青空に蔓(つる)を伸ばし、

足場を借りた樹木の高みのいたるところで、咲き誇っているのである。


「藤」のつく苗字の多さは、「田」と並んで双璧ではないだろうか。

蔓のたくましい生命力と、花の可憐さにちなんで、名字に一字「藤」を拝借したのであろうか。

佐藤・伊藤・権藤・後藤・近藤・遠藤・斉藤・工藤・進藤・江藤・

藤原・藤田・藤井・藤村・藤山・藤・藤長・藤下・藤本・藤木・藤森、きりがない。



そして、ふじ色よりすこし淡い紫に咲き誇る、「桐」の花も華麗な凛々しい姿で咲き誇る。

藤の垂れ下がった花房と対照的に、桐の花は葉の上に立ちあがって咲き誇る。


秀吉の家紋で有名な桐。あのデザインのとおり、葉を下にして咲いているのである。

タンスや下駄、茶箱などに桐の木は使われ、軽くて見栄えが良くて保存機能に優れていることは、

少なからず人に知られるところである。


しかし、その花は目立たずひそやかに人知れず美しく咲く。

「花」目立たざれど、「材」としては見事な樹木。

目立たないけれど仕事は出来る、人間も、そういう人が美しい。



五月の山には、藤・桐・山ツツジ・藪椿など、エレガントな花がよく似合うのである。