遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ホッキョクグマ/岩合光昭

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ホッキョクグマ   岩合 光昭   新潮社



私は、古くから写真雑誌を見続けていて、動物写真家の岩合徳光がお気に入りであった。

その子息が、岩合光昭(いわごうみつあき)である。

その名前と作品をひと目見たとき、徳光の息子さんだと思った。

父親と同じ、動物写真家の道を歩んでいた若かりし日の彼に出会ったのである。

それも、今となっては遠い日の記憶である。


岩合は、スチール写真もムービーも撮る。

彼の撮った、美しき地球の動物たちのTV番組は少なからず観ている。


タンザニアチータを記録し続けたシリーズは、そのチータの美しさに目を奪われた。

チータは、地球上で最も速く走る、最も美しい動物である。



陸上に棲む最大の動物が、ホッキョクグマである。

その赤ちゃんの可愛さは、これまた地球一番であろう。

そんなホッキョクグマの生活を追った岩合の作品も、シリーズとなって放送されている。


昨日、ニュースはホッキョクグマの個体数が減っていると伝えていた。

その原因は、「地球温暖化」だとも伝えていた。


ホッキョクグマは、海に氷が張らない季節は、空腹の季節なのである。

北の海にシッカリ氷が張ると、母熊は生まれて間もない赤ちゃんをつれて、

沖に待つアザラシをもとめて氷の面を歩いて行くのである。


しかし、最近は「地球温暖化」のために、海にシッカリ氷が張る時期が後ろ倒しになってきて、

ホッキョクグマの家族が、獲物を沖に獲りにいけなくなっている。

陸地で氷が張るのを待っている間に、赤ちゃんが飢え死にしてしまうケースが増えてきているのである。


このことは、岩合の番組で知った。


母熊は、沖の海に居る新鮮な餌を食べないと、子どもに与えるおっぱいが出なくなるのである。


ホッキョクグマは北極圏に棲む動物なので、生息地は狭くその個体数も少ない。

そんなに遠くない未来に、「絶滅の恐れのある動物」になるであろう。


京都議定書」が地球温暖化阻止に効果をもたらすのかどうかは、

何十年か何百年かの時間を要するのだろう。

しかし、人間が英知を絞った約束事だから、それを今は守るしかないと思う。


乱獲を止めればクジラはその数を戻してきた。

ホッキョクグマもかつて、その毛皮が珍重されて密漁が行われてきた。

しかし、いま、密漁は止んだが、地球の自然の変化でその数が減ってきたのである。

ホッキョクグマの個体数が戻るような「地球の回復」には、

途方もない人類の我慢の時間が必要とされている。


ホッキョクグマのための時間」は、

「クジラのための時間」とは比較にならないほど膨大だと思う。


イルカやクジラの乱獲に目くじらを立てるのに、

京都議定書を批准しない国の政府の、その精神構造が私にはわからない。

カワイイ白くまの赤ちゃんの飢え死にはヒステリックにならない、その精神構造がわからない。