遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ジャガーになった男/佐藤賢一

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ジャガーになった男   佐藤 賢一 (著)   集英社文庫 価格: ¥680 (税込)



 著者の佐藤賢一を、「王妃の離婚」で直木賞受賞直後に、

 NHKの「週刊ブックレビュー」のインタビューコーナーで、私は姿を見ていた。

 視線が上向きの、少年の心のまま大きくなったような好青年であった。

 ことのほか、中世のヨーロッパに惹かれている青年である。


 その後、どなたかのブログだったか、この本の紹介記事をみて、

 表紙を見て面白そうだと直感で購入した。


 「ジャガーになった男」が、デビュー作となる。


伊達藩士・斉藤小兵太寅吉は恋人を捨て、冒険を求めて、支倉常長遣欧使節に加わった。
着いたイスパニアはすでに全盛期の栄光を失っていたが、一人のイタルゴ(戦士)と意気投合し、
共に戦場に赴くために、帰国する使節団と訣別する決心をする。
トラキチが初めてイスパニヤの地を踏んだとき、陽気なセヴィジャの巷は、ドン・キホーテ・
デ・ラ・マンチャの話題で持ちきりとなっていた。
17世紀のスペインに奥州武士が登場。比類なく奇想天外なストーリーが展開する。

第6回小説すばる新人賞受賞作に大幅加筆、600枚の長編となったロング・バージョン。 


 17世紀のスペインに主人公寅吉が到着した後を、しばらく読み進めていくと、

 少し前に再読したばかりの「三銃士」(http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/27489249.html)

 雰囲気に似ていると感じ始める。


 フランスとスペインという舞台の違いはあれ、まったく同時代なのだから似ていて当然なのだが、

 なんとなんと、斉藤寅吉はフランスの銃士隊長トレヴィルと、オランダの地で一戦を交える、

 名乗りあって決闘することになるのである。


 トレヴィルは、ダルタニアンと同郷のガスコーニュ人で、三銃士たちの直属のボスなのである。

 アトスとアラミスも決闘場面に介添え役で登場する。

 著者の佐藤賢一は、自作の主人公を実在の凄腕と闘わせたかったのだろう、

 読み手へのサービス精神も怠りない。


 やがて、寅吉は欧州から海を渡り、新大陸ペルーで、

 ジャガーと呼ばれる男になる。


 仙台で許婚(いいなずけ)と訣別し、スペインへ渡り、

 スペイン人の妻を放置したまま、今度は新大陸に渡る。

 ペルーではスペイン人に抑圧されたネイティブ側に組し、

 部族の神を象徴する巫女を幸せにするため、妻にするために、

 ジャガーとなったのである。


 寅吉は、めっぽう女好きである。

 しかし、戦うことが好きで、大暴れしたくてしたくて、

 引き止める女を振り切って、血なまぐさい戦場を求めて、世界を股に架ける。


 男に刃物や飛び道具を持たせると、女は幸せにならない。