遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ナポレオン狂/阿刀田高

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ナポレオン狂 阿刀田 高 (著)

1981年 講談社文庫 価格: ¥540 (税込)




ブラック・ユーモアな短編集が13作、第81回直木賞受賞作品である。

第32回日本推理作家協会賞受賞の「来訪者」も収録されている。



星新一の「ぼっこちゃん」は、100メートルダッシュを50本みたいな本。
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/15175937.html


この「ナポレオン狂」は、400メートルを13本のような本である。

走る距離はほとんど同じ。



出版社の儲け主義としか思えない、

上下分冊で実利を追うマラソン小説が跋扈している昨今であるが、

この時代の本作りは、丹念になされていて、

これも実に爽やかな一冊である。


爽やかな姿勢で作られているが、

内容は、ブラック・ユーモアだから、怖くて面白い。


有史以来、人のやることなすこと考えていること、みな怖いから、

いまさら「怖い小説だわい」と驚きもしない。


普通じゃない人たちがわんさか登場するわけじゃなくて、

普通の人たちが怖いことをわんさか考えてやってくれる。


いまの新聞記事を読むようなものだけど、

新聞記事では笑えない。


それを、面白い読み物にした、ただならぬ阿刀田のセンスと筆力に脱帽する。

我が国にも、ロアルド・ダールが居る。


私は、ダールより阿刀田が好きである。



収録作品

ナポレオン狂 
来訪者 
サン・ジェルマン伯爵考 
恋は思案の外 
裏側 
甲虫の遁走曲(フーガ) 
ゴルフ事始め 
捩れた夜 
透明魚 
蒼空 
白い歯 
狂暴なライオン 
縄