遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

東京カテドラル聖マリア大聖堂/丹下健三

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NHKハイビジョン特集「夢を作り出した建築界の巨人-丹下健三」を観る。

丹下健三の作品を訪ねて、彼の偉業をたどる番組であった。

広島平和記念公園(1955年)

東京オリンピック国立屋内総合競技場(代々木体育館)(1964年)
  私の関連記事→ http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/21137922.html

香川県庁舎(現・東館)(1958年)

番組は、以上の代表作を、まずじっくり鑑賞させてくれた。


いつ何度どこから観ても、変わらずずっと素晴らしい。

モチーフに、日本の伝統的な「神社」や「寺院」様式を借りてきても、

モダンな、しかし嫌味のない上品な作品に作り上げてしまう。

深い思索の結果生み出された、なんとも軽やかな美しさに、

あらためて感動した。



そして、丹下自身の一番のお気に入りが、


この作品も、代々木体育館と同じ1964年の竣工である。


コンクリートとスチール屋根の教会で、

石と木の伝統的な西洋の教会の、対極にある建物である。

しかし、天空から見ると屋根の形が「十字架」であるところは、

ヨーロッパの教会と同じである。



外観に使った材質は、当時としては相当アヴァンギャルドであったと思うが、

どこを切り取っても、完成された洗練されたデザインで、

しかも、敬虔な教会のイメージを損なうことはない。



内部は、木や大理石など自然のものを多く用い、

外壁の人工的な素材と何の違和感もなく調和させている。


縦に長くとったスリットで、崇高な自然の光を聖堂内に取り込み、

堂内の人の目と心を、天上に導いてくれる。



番組の案内役のお嬢さんが、

祭壇の前で涙するのを見て、さもありなんと思った。

マリアさまに導かれし魂と、丹下の作り出した荘厳な静けさに、

彼女は涙したのであろう。