遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

日本美術応援団/赤瀬川原平, 山下祐二

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日本美術応援団     赤瀬川 原平 (著), 山下 祐二 (著)

ちくま文庫    価格: ¥998 (税込)



ネットで偶然発掘したこの書物。

赤瀬川は既知であったが、山下祐二は初対面。

ま、絵描きと学者の、日本美術のよもやま話的鑑賞対談集である。


水墨画で、日本美術に目覚めたお二人が、

最初は、画集を観ながらはじめた対談が、

「やはり現物を見て、その感動がさめないうちに語り合う」

という、実況形式の対談集に発展し、それを一冊にまとめたものである。


俎上にあがるは、以下の目次のとおりの巨匠たちで、

水墨画にはじまり、絢爛豪華な日本画あり、遺跡あり、工芸品ありで、

国宝級の日本美術のオンパレードである。



目次

雪舟が神棚から降りてくる―雪舟

野心ぎらぎら等伯がのし上がる―長谷川等伯

道楽のリアリティー極まれり―伊藤若冲

エゴン・シーレもまいった写楽の“凄み”―東洲斎写楽

北斎よ、その肺活量の大きさは何なんだ―葛飾北斎

焼きたてクッキーとの対話縄文、恐るべし―縄文土器

テツガクしない石庭の見方―龍安寺の石庭

光琳をガラスケースから解放せよ―尾形光琳

ロマンを吹き飛ばす「乱暴力」―青木繁

「死体」が主人公のインスタレーション―装飾古墳

「素朴」や「異端」じゃくくれない―円空・木喰

生半可じゃない真面目さ―円山応挙

覚醒した蕭白を見よ―曽我蕭白

ナマ乾きの油絵―高橋由一

裕福な志願兵、パリに殉死―佐伯祐三

応挙のメッセンジャー南紀で絶好調―長澤蘆雪

実は、内気なアヴァンギャルド安井曽太郎

手擦れニコン的 根来の美―根来塗



電車で読んでいて、私はまた、降りる駅を乗り越しそうになった。


日本の美術は、ワールド・ワイドで素晴らしいことは、

世界の巨匠が、浮世絵などに影響を受けたことから証明できるが、

私のような素人にも、著者の二人が分かりやすく語ってくれる。


赤瀬川は表現者の立場で、山下は研究者の立場で、

現物の作品の前にひれ伏した後、

「作品の力」がどこから湧いてくるのか、

読み手に押しつけることなく、素直に感じた言葉で語ってくれるのである。


それが、説教くさくなく、面白い。

軽くて、広くて、でも、決して浅くなくて、嬉しくなってくる。



作品のカラー写真は鮮明で、作家のプロフィールや専門用語の注釈が、

脚注で用意されていて、

いたせりつくせりの「こしらえ」になっている。



私は、少なからず西洋の巨匠の作品は、本物を観ている。

しかし、本書で紹介されている日本美術は、作品をナマで見ていない。

ほとんど現物を観ていないが、こんな記事を書いたりなんぞしている。
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/7841299.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/7657613.html



まるで観てきたような気にさせる本書ではあるが、

次は本物に出会いたいと、思う。