三銃士〈上・下〉 アレクサンドル・デュマ (著)、 生島 遼一 (翻訳)
岩波文庫 価格: ¥798 (税込)
小学生の私が読んだ、おもしろ「翻訳」物語は、
あと、文句なしに面白かったのが、アレクサンドラ・デュマの「三銃士」であった。
もうひとつのデュマの代表作「モンテクリスト」と双璧の面白さであった。
小学生向きの宣伝文句なら、上のままでいいであろうし、
私の遠い記憶も、この範囲から一歩も出るものではなかった。
しかしながら、この度読み直した大人になってからの岩波文庫は、
どろどろとした、ややこしい物語になって来る。
銃士たちの友情・冒険物語に、色恋物語・愛憎物語が付け加えられ、
俄然ややこしくなるのである。小学生向きではない。
下巻にいたっては、ミレディーという、
20台半ばの絶世の美女に、多くのページが割かれている。
この絶世の美女は、同時に、悪魔の使いのような女で、
極悪非道を地で行く、生粋の悪女で、
クライマックスは、三銃士+彼らの仲間vsミレディーという対立軸になってゆく。
なぜ、女一人に男が束になって挑まなければならないのか。
「妖艶なる絶世の美女」は、剣よりも強しなのだ。
ミレディーは、「三銃士」の裏主人公なのである。
男が寄ってたかって、うら若き美女に翻弄されることは、
世紀を超えて通奏低音として、現代にも流れているかもしれない。
17世紀の話を、19世紀にデュマが著し、21世紀に私たちが読む。
デュマが創り上げたエンターテイメントは、永遠に不滅である。
「モンテクリスト」は、文庫で7巻。
こちらは、さらにさらに面白いが、少し長すぎる、かもしれない。
読むべきか否か、それは問題である。