遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

バッハからサティへ/珠玉のピアノ名曲集

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決定盤!  珠玉のピアノ名曲集 全20曲


この類のベストCDは、世にたくさん出ていて、選ぶのに事欠かない。


このCDは、遠い遠い昔にレコード盤(1973年に発売)で買ったものと、

同じアルバムを、また数年前に買いなおしたものである。(現在は廃盤か)

ものぐさなので、聴き慣れた「安全牌」を再購入してしまった。


基本的なピアノ小品の名曲は、一揃い含まれているのではないだろうか。



曲目リスト

1.乙女の祈り(バダジェフスカ) ジョゼフ・クーパー  2:54

2.調子の良い鍛冶屋(ヘンデル) ウィルヘルム・ケンプ  5:25

3.主よ,人の望みの喜びよ(バッハ) ジュリアス・カッチェン  3:39

4.トルコ行進曲(モーツァルト) ウィルヘルム・バックハウス  3:11

5.エリーゼのために(ベートーヴェン) ジョゼフ・クーパー  3:12

6.月光の曲~第1楽章(ベートーヴェン) ウィルヘルム・バックハウス  5:40

7.楽興の時第3番(シューベルト) クリフォード・カーゾン  1:54

8.即興曲第2番(シューベルト) ジョゼフ・クーパー  4:38

9.歌の翼に(メンデルスゾーン) ジュリアス・カッチェン  4:05

10.春の歌(メンデルスゾーン) ウィルヘルム・バックハウス  1:59

11.トロイメライ(シューマン) クリフォード・カーゾン  3:03

12.愛の夢第3番(リスト) パスカル・ロジェ  4:30

13.忘れられたワルツ(リスト) ジョゼフ・クーパー  3:34

14.ワルツ変イ長調(ブラームス) ジュリアス・カッチェン  1:21

15.ハンガリー舞曲第5番(ブラームス) ジュリアス・カッチェン  2:09

16.ハンガリー舞曲第6番(ブラームス) ジュリアス・カッチェン  3:08

17.月の光(ドビュッシー) ジュリアス・カッチェン  4:54

18.亜麻色の髪の乙女(ドビュッシー) ジャン・ロドルフ・カールス  2:27

19.鐘の前奏曲(ラフマニノフ) ジョゼフ・クーパー  4:10  

20.ジムノペディ第1番(サティ) イレーナ・ベレッド  2:58



上のごとく、それぞれ曲名と作曲家と演奏家と演奏時間を表しておいた。

因みに、この錚々たる作曲家たちの生きた時代をおさらいしてみると以下のとおりである。


バダジェフスカ(1834~1861)ポーランドの女流ピアニスト兼作曲家。

ヘンデル(1685~1759)ドイツ生まれでイギリスに帰化した作曲家。

バッハ(1685~1750)ドイツの作曲家、鍵盤楽器の名手。

モーツァルト(1756~1791)オーストリアザルツブルクに生まれ、ウィーンで没した。
								
ベートーヴェン(1770~1827)ドイツのボンに生まれる。

シューベルト(1797~1828)オーストリアの作曲家。ウィーン近郊で生まれる。

メンデルスゾーン(1809~1847)ドイツロマン派の作曲家。

シューマン(1810~1856)ドイツの作曲家、ピアニスト。ロマン派音楽を代表する一人。

リスト(1811~1886)ハンガリー生まれのドイツ人ピアニスト、作曲家。

ブラームス(1833~1897)ドイツはハンブルクに生まれ、ウィーンに没した。

ドビュッシー(1862~1918)フランスに生まれた印象派作曲家。

ラフマニノフ(1873~1943)ロシアの作曲家、ピアニスト。

サティ(1866~1925)フランスの作曲家。



乙女の祈り」「エリーゼのために」「月光の曲・第1楽章」「トルコ行進曲」「春の歌」

トロイメライ」「ハンガリー舞曲第5番」は、30年前の私でもお馴染みの名曲。

なかでも、バックハウスの弾く「トルコ行進曲」は、

私の経験になかった小気味良いテンポの演奏で、新鮮な出会いであった。


はじめてこのアルバムで出会った、

美しい旋律の、歌の翼に(メンデルスゾーン)、愛の夢第3番(リスト)や、

躍動感のある、即興曲第2番(シューベルト)、忘れられたワルツ(リスト)、

鐘の前奏曲(ラフマニノフ)には、一目で恋に落ちてしまった。


30年前当時の私は、ジャズばかり聴いていて、

このピアノ曲のレコードとは、まだクラシックの入口から少し入ったところでの出会いであった。


前衛的といわれるフリージャズを聴いている体は、

ストラビンスキー(1882~1971)やラヴェル(1875~1937)の

近代的な音楽を、難なくすんなりと受け入れてくれ、

さらに遡ってクラシックにだんだん興味を持ち出した、そんな頃であった。



そして、このCDに入っている私の好きな極め付きが、

主よ,人の望みの喜びよ(バッハ)、ワルツ変イ長調(ブラームス)、

月の光・亜麻色の髪の乙女(ドビュッシー)、ジムノペディ第1番(サティ)である。


この5曲は、今となってはポピュラーな曲になってしまった感があるが、

イージーなBGMに成り下がってしまうような実力ではない。


バッハからブラームスまで170年、

ドビュッシー、サティまで200年の隔たりがあるが、

音楽の本質はその隔たりを感じさせない。


人や自然や神を崇めるような精神性、心の広がりが、

時代を超えた音楽が持つ普遍性なのだろうか。


私の筆力では巧く褒められないが、一度きちんと聴いていただき、

頭で解ろうとせず、心で何かを感じていただきたい。