遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ベスト・オブ・グレン・ミラー

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ベスト・オブ・グレン・ミラー グレン・ミラー楽団



曲目リスト・演奏時間・録音年月日
1.ムーンライト・セレナーデ          3:21  1939.4.4
2.茶色の小瓶                        2:48  1939.4.10
3.星へのきざはし                    2:50  1939.5.9
4.グレン・アイランド・スペシャル    2:59  1939.7.26
5.イン・ザ・ムード                  3:33  1939.8.1
6.スターダスト                      3:21  1940.1.29
7.タキシード・ジャンクション        3:26  1940.2.5
8.ダニー・ボーイ                    2:14  1940.2.5
9.私の青空                          3:12  1940.4.28
10.ペンシルバニア 6-5000            3:12  1940.4.28
11.アンヴィル・コーラス             4:54  1940.12.13
12.真珠の首飾り                     3:12  1941.11.3
13.ヴォルガの舟歌                   3:23  1941.1.17
14.チャタヌーガ・チュー・チュー     3:24  1941.5.7
15.ムーンライト・ソナタ             3:35  1941.11.24
16.二人の木陰                       3:10  1942.2.18
17.アメリカン・パトロール           3:17  1942.4.2
18.カラマズー                       3:15  1942.4.20
19.アット・ラスト                   3:05  1942.4.20
20.セントルイス・ブルース・マーチ   4:31  1943.10.29




ジェームス・スチュアートと、ジューン・アリスン主演の1954年の作品

グレン・ミラー物語」は、グレン・ミラーを知る伝記映画として大変面白かった。

単に映画として観ても、グレン・ミラーという男の、

音楽にささげる情熱や夫婦愛・人間愛を、

名優ジェームス・スチュアートが好演した、秀作である。


彼は、第二次大戦さなかの1944年、ヨーロッパへ慰問演奏に飛び立った後、

乗っていた専用機が英仏海峡で行方不明になり、40歳で亡くなった。

(後の調査で、味方の爆撃機が上空で捨てた爆弾が当たり墜落したとわかった。)



私がグレンミラー・オーケストラを知ったのは、当然ながらグレンミラー亡き後のことであり、

彼の有名曲は、楽団の後継者が演奏していた。

私はその「後継楽団」の70年代に録音された、グレンミラーベスト盤を持っていた。



その後、TVの何かのCMで、バックに流れる「茶色の小瓶」を聴いて愕然とした。


それは、後継楽団の演奏する「茶色の小瓶」とはまったく異質の、

見事にスウィングするものだったからである。

私の持っていた「グレンミラー」は、ムード音楽集であった。


それ以来、そのレコードはお蔵入りとなった。



このCDアルバムは、ムード音楽ならぬ、グレンミラーのオリジナル・オーケストラの、

素晴らしい演奏集である。


一番油の乗り切った、1939年から40年代初期の録音で、音質は良くない。


音質は良くないが、その演奏たるや、踊りだしたくなるほど見事なものである。



グレン・ミラーの代名詞とでも言うべきオリジナルの名曲は、

「ムーンライト・セレナーデ」「茶色の小瓶」「イン・ザ・ムード」

「タキシード・ジャンクション」「ペンシルバニア 6-5000」「真珠の首飾り」

「チャタヌーガ・チュー・チュー」「アメリカン・パトロール

などであるが、

おなじみのスタンダード、「スターダスト」「ダニー・ボーイ」「私の青空

ヴォルガの舟歌」「セントルイス・ブルース・マーチ」もイイ。



ここにもSP盤時代の「3分間の芸術」が存在した。



グレン・ミラーの作曲と編曲の才能の偉大さが、余すことなく詰め込まれた1枚である。

もちろん、彼のオーケストラの秀逸な演奏技術も堪能できる。



彼は、一介のトロンボーン奏者として生涯を終えることなく、

作曲と編曲の分野で、ジャズの歴史にその名を刻み、

自ら率いた楽団の演奏を通じて、ジャズの素晴らしさを大衆に広めた偉人であろう。


それは、たとえば「茶色の小瓶」と「私の青空」の躍動感のあるサウンドを聴けば、

万人が納得してくれると思う。



これを「スウィング」と言うのである。