遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

摩天楼の身代金/リチャード・ジェサップ

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摩天楼の身代金      文春文庫 (275‐7)
リチャード・ジェサップ (著), 平尾 圭吾(訳)


昨夜、NHKのBSで「シンシナティ・キッド」が放映された。

リチャード・ジェサップ原作のポーカー小説を、

「夜の大走査線」のノーマン・ジュイソンが1965年に映画化。


スティーブ・マックィーンと大御所エドワード・G・ロビンソンの、

カード(ポーカー)の対決シーンが超有名。

アン・マーグレットのダイナマイト・バディも素晴らしい。


そのリチャード・ジェサップの代表作は、「摩天楼の身代金」。

映画にはなっていないか、映画にはできないか。


摩天楼とは、この作品ではオープンしたての高層ホテルを指す。

この高層ホテルを、はったりじゃなく、爆破させると脅迫する犯人が、

この物語の主人公である。


「ハッタリ」じゃなく爆破させることを可能にするには、

それはそれは用意周到に計画されたシナリオが存在するのである。

主人公は、そのシナリオに沿って沈着冷静に行動するのである。


実際に爆破させると、映画「タワーリング・インフェルノ」(これもマックィーン主演だ!)

のような、パニックになってしまう。


耐震強度疑惑のホテルのような、しょぼいスケールの確信犯たちとは比ぶべくもない、

主人公の念入りの構想には、なんだか嬉しくなってくる。


人さまの命に身代金を要求するのではなく、

摩天楼(ホテル)の身代金を、要求するのである。

その身代金は、主人公のものになるのかならないのか…。

読み終えるのが勿体無くて、「もっと、楽しませてぇ」と言いたくなる作品である。



この名作は、現在絶版中である。

楽天フリマに2冊、Amazonマーケットプレイスに1冊出品されていた。

こんな作品を絶版にして、他に何を出版するというのだろうか。



20年以上の時を経てなお、この1冊は他に類を見ない斬新なプロットで、

読み手を魅了すること、

ルシアン・ネイハムの「シャドー81」と双璧である。

私の「シャドー81」の記事→http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/13085596.html




傑作ミステリー・ベスト10(1983)の海外部門で
「摩天楼の身代金」は堂々の第一位となっている。

東西ミステリーベスト100 第74位