遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

警察署長/スチュアート・ウッズ

警察署長〈上・下〉 ハヤカワ文庫NV
スチュアート・ウッズ (著)、 真野 明裕 (翻訳)
価格: 上巻 ¥612 (税込)下巻 ¥652 (税込)

1982年の「アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞受賞作」



私は、この小説「警察署長」(上・下)を、

実に3セット購入している。

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最初は、以前に購入したことを忘れていて、

たまたま書店で見つけて喜び勇んで買い求め、

上下読了後に、以前のものを発見して、

「オー・ノー(前に買ってたんや!)」状態であった。



それから、数年経って、何を思ったのか、

ネット書店でわざわざ「警察署長」と検索して、

探し出してネット購入している。


読み始めてすぐ「オー・マイ・ゴッド(もう、読んでるやん!)」状態であった。


この凡庸な翻訳タイトルがきっと悪いのだと、

我が記憶力を棚に上げて毒づいたりしていた。


しかし、内容は凡庸ではない。


1920年代の牧歌的なアメリカ南部の田舎町から始まる、ある事件に、

人種差別、KKK(クー・クラックス・クラン)、

政治的野心等々が絡んで進んでいく。


アトランタ近くの小さな町デラノの、警察署長3代を巡る、

50年になんなんとする大河ロマンミステリである。


アメリカ南部は、小説の題材に事欠かないが、

しかし、ジェームス・エルロイのようなエグイ妖艶なドロドロ感はないし、

トマス・ハリス的ホラー要素もないし、アガサクリスティ張りの犯人探しもない。


スチュアート・ ウッズのこの小説は、

南部の青草の上を通り抜ける、

一陣の風のような息づく人間の魂が、描かれている。


一気に読ませてくれる。爽やかでもある。


★20世紀傑作ミステリーベスト(日本推理作家協会全会員アンケート)
(海外部門)第7位