遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

キュートな招き猫が、呪われた姿に改ざんされた問題

吉田朗 「渋谷猫張り子」 2020年制作 H130 W91.8 D91.5cm ガラス繊維強化プラスチック、ステンレススチール補強、 真鍮製放水ノズル、ウレタン塗装、PVC フィルム

上の作品は、吉田朗という作家の「渋谷猫張り子」。高さが130㎝もあって、招き猫をモチーフとした作品で、とても洗練されていて可愛い作品です。

三井不動産株式会社が所有するホテル、シークエンスミヤシタパークの最上階にあるバー「SOAK」内に設置されていた、そのバーのために特別に制作された作品だとのことです。

ところが、そのバーの運営会社が変わったとたん、「渋谷猫張り子」は見るも無残に改ざんされてしまいます。
吉田氏が一点ものの作品として納めたものが、下の画像のとおり、オリジナルのフォルムのまま、台座もろとも特注のシートで覆い隠して作品性を壊してしまっています。

公共性のある場所に作家の作品を設置して、来店客を増やしたり作品を楽しんでもらうことが、芸術作品を購入することの目的のひとつだと思うのですが、作品を無残な形にした当事者たちはそういうことがわかっていないようです。かっこいい自己満足のオブジェに作り変えたつもりだったようです。

この姿では、人や金を「招けない猫」になってしまっていますが、作品を改ざん人たちにはそのことも分からないのでしょう。

吉田氏の所属事務所はHPで、「吉田朗の作品に対して行われた著作権の侵害、無断改変された作品の公開等の問題について。」として、抗議文を掲載しました。

その後、当該作品「渋谷猫張り子」は吉田氏の元に帰ってきましたが、同氏のTwitterで見ると、原形をとどめないままの姿で哀しみの帰還となりました。

大阪のIRカジノの誘致動画で、奈良美智村上隆の両人の作品を無断で使っていた問題や、東京五輪エンブレムの盗作など、アートに関する著作権を心得ない輩が作家の権利や心を傷つけることになっています。

「渋谷猫張り子」は、元の姿に戻せるのは無理かもしれませんが、再作製された同じものがどこかで再び設置されることを祈っています。この招き猫、レプリカが販売されないかなとも思う次第であります。

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