坂本龍一が亡くなる一カ月前に、都知事の小池百合子に手紙を出していたそうで、この手紙は彼が亡くならなければ世に出ることはなかったかもしれないです。
そうだとすると、もっと違う形で都知事に訴えた方がよかったかもしれないのですが、ともあれこの手紙で知事とその周辺と手を組んだ悪党が神宮外苑を切り刻もうとしているようです。
当初はオリンピックの「印籠」を掲げてて木を切り倒していた小池でしたが、その後神宮外苑の再開発の話がネットで話題になっていて、このほどそのことがもっと大きく取り上げられることになりました。
経済の回復のあてもない日本で、貧困化も少子化もどんどん進んでいく日本で、商業施設に金を投じても回収できないだろうに、意味不明の再開発です。
再開発投資だけで一時的な利益を上げたい悪党の浅はかな考えで、将来にわたって豊かな時間を提供してくれる空間を潰してしまう。これは、坂本龍一(や大江健三郎も)が生前に反対していた防衛費の増額や原発の新設で一山当てようという悪党の浅ましさと共通するものではないでしょうか。
政治家がやらなければならないことは、それは多くの住民のためになることかどうかを判断することで、東京の緑を減らすことをストップさせるのが政治家の務めだと思いますが、いかがでしょう。
私も何度か神宮外苑に行ったことがありますし、東京の街角をあてもなく歩いたこともありますが、大阪に比べて緑は多いと感じていましたし、コンクリートと緑は比較的うまくマッチしている街だと思っていました。
坂本の手紙にあるように、ニューヨークでは2007年からブルームバーグ市長が100万本を木を植えるプロジェクトを開始したそうで、ボストンやLAもそれに追随しているそうですが、2023年の東京はその反対の動きを見せています。大阪でも木を伐りカジノを誘致する首長が、大阪を博徒の街に仕立て上げようとしています。
まったくもって、政治家の風上にも置けない東京や大阪の首長であります。岸田も含めて、小池、吉村の三悪人がいろんな意味で日本の沈没を早めている気がします。
坂本龍一でなくとも、東京の木を伐る政治に心を痛めている人はたくさんいると思います。神宮の再開発、なんとかならないものかと大阪から祈っているきょうこの頃であります。
突然のお手紙、失礼します。私は音楽家の坂本龍一です。神宮外苑の再開発について私の考えをお伝えしたく筆をとりました。どうかご一読ください。
率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません。この樹々は一度失ったら二度と取り戻すことができない自然です。
私が住むニューヨークでは、2007年、当時のブルームバーグ市長が市内に100万本の木を植えるというプロジェクトをスタートさせました。環境面や心の健康への配慮、社会正義、そして何より未来のためであるとの目標をかかげてのこと、慧眼です。NY市に追随するように、ボストンやLAなどのアメリカの大都市や中規模都市でも植林キャンペーンが進んでいます。
いま世界はSDGsを推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません。持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです。
東京を「都市と自然の聖地」と位置づけ、そのゴールに向け政治主導をすることこそ、世界の称賛を得るのではないでしょうか。そして、神宮外苑を未来永劫守るためにも、むしろこの機会に神宮外苑を日本の名勝として指定していただくことを謹んでお願いしたく存じます。
あなたのリーダーシップに期待します。
2023年2月24日 坂本龍一