遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

全山紅葉/東山魁夷の「秋翳(しゅうえい)」

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本日ご紹介する日本画は、東山魁夷(1908-1999)の「秋翳(しゅうえい)」(1958年、東京国立近代美術館蔵)です。

先日秋のスナップ写真を投稿しましたが、そこでかつて記事にしたことのあるこの一枚を思い出しました。

山頂だけをクローズアップにした燃えるような紅葉を描いた大胆な作風は、東山魁夷の静かな表情や立ち居振る舞いと対照的です。

「秋翳」は、どこかの山の頂部分の紅葉だけをシンメトリーに表現していますが、単純な構図とは対象的に祈るように丹念な筆使いがうかがえます。紅葉の頂だけで全山の紅葉を想像させる大胆で印象的な作品です。

本作は1958年の作品で、たて160㎝横167㎝と比較的大きなものです。真摯な一筆一筆で創造した作品だけが持ちえる本物の紅葉を凌駕するような存在感があります。

若い頃に長く低迷していた東山は、大胆な構図の作品で世に出てきたとも言えます。

 

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上の「道」(1950年 たて130cm よこ102cm 東京国立近代美術館蔵)という作品も、大胆な東山作品の代名詞と言える有名な作品です。

東京国立近代美術館でいつか出会いたい、ふたつの大きな作品のご紹介でした。