遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

哀悼 ありがとう 瀬戸内寂聴さん

f:id:toship-asobi:20211111233428j:plain

瀬戸内寂聴さんが亡くなられた。

1980年ごろだったか、私は社会党からとある市会議員に立候補した先輩の選挙運動を手伝っていました。その時のある日、桃太郎(たすきをかけた候補者が、のぼりを持った運動員たちとともに街を練り歩き、有権者に直接支持を訴える行動)をして歩いていると、一台のタクシーがスローダウンして後部座席の窓が降りて「社会党!がんばってー!」という声が飛んできました。

私たちははッとしてタクシーを見たら、笑顔で私たちに手を挙げて激励してくれる瀬戸内寂聴さんの笑顔を目にしました。

「ありがとうございます!」と手を振り返したら、寂聴さんを乗せた後光がさす美しいタクシーは走り去りました。

おかげで私の応援していた候補は当選したのですが、当時はまだ社会党野党第一党として存在感を示していたころで、振り返ってみると1980年は「55年体制」からまだ25年しかたっていないそんな遠い過去の思い出話になってしまいました。

もうその頃は、瀬戸内晴美ではなく瀬戸内寂聴になられていましたが、私は瀬戸内さんは50歳を過ぎて仏門に入られてから大きくなられたと感じます。その頃に、小説家であると同時に宗教家・思想家になられたと思います。

彼女は、自身の子どもや家庭を捨てて愛に走った壮絶な人生を経験していますが、そのことが仏門に入った理由の一つでもあるのでしょうが、一度の人生を強く生き抜いたお方だったのでしょう。彼女の言葉や笑顔に救われた人々は、後を絶たなかったのではないでしょうか。

瀬戸内寂聴さんの死を悼み、謹んでご冥福をお祈りします。そしてもう一度、ありがとうございましたと申し上げます。 合掌