遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

生まれてきただけで1勝、負け越し上等/人生の「星取表」

f:id:toship-asobi:20191028013502j:plain

 きょうは、病気やケガで苦しんでいた旧友と久々に会ってきました。友は体調がすぐれずしんどそうだったのですが、話しをしていくにつれ少しずつ元気を取り戻してくれたようで、持っていた杖も不必要なくらいの足取りで帰っていきました。

 65歳をもうじき卒業して66歳になろうとしています、私。

 人生75歳として、人生を大相撲の15日間に換算すると、私の人生は13日目を終了しました。人生残りはあと「2日」のところまで来ました。

 まあ残り2日間は人生にして10年もあるのですが、でももう残り少なくなってきました(まあ実際は85歳くらいまで生きるつもりですが)。

 でこれまでの人生の「星取表」はどれくらいかと言いますと、生まれてきただけで、初日は白星だったのですが、その後は勝ち負けを繰り返していまして、13日目を終えて5勝8敗くらいだと思います。

 10日目を終えたころ(50歳のころ)に、「今の星取り、4勝6敗くらいかな」と発言して妻にショックを与えたようでした。その時点で私の星取表は6勝4敗くらいだと思っていたようで、負け先行発言にショックだったようでした。

 子どもたちも素直に育っていたし、幸せな妻に「何で?」と言われました。
 勝ち越し確定だと思っている人間なんてくだらないし面白くないし、努力もしないだろう、というのが私の言い訳の言葉でした。

 先だって読了した小説「ある男」の登場人物の中に、美涼(みすず)という心身ともに美しい女性がいまして、彼女が「私、3勝4敗主義なの」というシーンがありました。

 4敗しても3つ勝っていれば十分だということなんでしょうけど、日本シリーズ囲碁・将棋のタイトル戦なら「負け」が確定なのですが、彼女の考え方は私と同じだとうれしく思いました。

 人生、8勝7敗以上の勝ち越しを狙っていません、私。5勝10敗や6勝9敗なら上出来だと思っています。

 今5勝8敗ですから、残り2連敗で、人生5勝10敗。1勝1敗で6勝9敗。ほぼ理想通りの人生だと思うのです。

 「ある男」の美涼は、まだ30前後の若い人でしたが、私は「人生負け越しで十分なり」と悟ったのは50歳近くなってからだと思います。

 思い返せば、私は中学を卒業する15歳くらいまでは、「3連勝」で勝ち越し街道を突っ走っていると自覚していた無知なおめでたい少年でした。

 でもその後、おびただしい数の「勝ち越し」を狙っていたり「勝ち越し」組だと思っている人間に出会って、あんなに「お下品」なら負け越し組でいいと悟ったわけです。「お下品」というのを説明すると長くなるので割愛します。

 人生の「星取表」は、生まれてきたというだけの1勝で十分、負け越し上等なのです。

 そんなわけで、66歳を前にしてああ楽しくて良き負け越し人生だったなあと、しみじみ思っている今日この頃なのであります。