遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

LAコンフィデンシャル/ジェイムズ・エルロイ

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LAコンフィデンシャル〈上・下〉 文春文庫
ジェイムズ エルロイ (著) 小林 宏明 (訳) 価格: 各¥600 (税込)

ジェイムズ・エルロイのLA四部作

ブラック・ダリア
「 ビッグ・ノーウェア」
「LAコンフィデンシャル」
「 ホワイト・ジャズ」

3番目の小説のご紹介。



監督:カーティス・ハンソン
原作:ジェームス・エルロイ
主演:ケビン・スペイシーラッセル・クロウ、キム・ベイジンガー 、ガイ・ピアース


私は、映画のほうを先に観てしまった。

例によって、映画の内容をほとんど憶えていないので、

小説も、と読みはじめた。映画もも一度観ることにする。



キム・ベイジンガー演じるところは、小説の登場人物とすぐ結びついたが、

ケビン・スペイシーラッセル・クロウが主人公のどちらの刑事役を演ったのかは不明。


そもそもが、登場人物が入り乱れてややこしい。

そのうえ、エルロイの名前の用い方・使い方、

姓・名・俗称などを好き勝手に使いまわすものだから、

「登場人物一覧」と首っ引きでも、よくわからなくなる。


私は、ミステリは翻訳ものを中心に読んでいるが、

世間で、翻訳ものが敬遠されるひとつの理由が、

「登場人物の名前がおぼえられない」というもの。


ま、慣れれば何でもないことで、食わず嫌いだと思う。

にしても、エルロイは翻訳者・読者泣かせの作家であることは間違いない。



しかし、それを割り引いてもLA四部作は凄い。深い。重い。



キース・ジャレットが唸りながらソロピアノを弾くが如く、

棟方志功が唸りながら版木を彫るが如く、

エルロイは、唸りながら小説を書いているような気がする。

キーボードも使っていないような気がする。



唸りながら、硬いペン先に怒りをぶつけながら、創作しているような気がする。



刑事、政治家、ギャング、ちんぴら、娼婦、実業家、マイノリティ、

検察官、警察署長、老若男女、貧しいものも富める者も、

清廉な人物はひとりも登場しない小説もあり、である。

当たり前か。



四部作からは外れるが、エルロイの「アメリカン・タブロイド」は、

ケネディ大統領が暗殺された時代のアメリカを、実名の登場人物で描いている。

あの、暗黒の時代は、あの時代に終わったものではない。

実録ものにも、正義の味方なんか誰も登場しない。



こういった小説を「ノワール」とか「暗黒小説」と呼ぶようである。

んなもの、人の持つ心の闇のようなものを普通に描いたら、みなノワールである。

カテゴライズする意味などない。

一応ミステリの書庫に区分しているが。



LA四部作と「アメリカン・タブロイド

清く正しく美しく生きるために、こういう小説こそ、読むべきである。


20世紀傑作ミステリーベスト(日本推理作家協会全会員アンケート)
(海外部門)
ブラック・ダリア」第22位
「LAコンフィデンシャル」第18位