遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

検屍官/パトリシア・コーンウェル

イメージ 1

検屍官 講談社文庫
パトリシア コーンウェル (著), 相原 真理子 (翻訳) 価格: ¥820 (税込)


検屍官ケイ・スカッペータシリーズのラインナップと発売日は、以下の通り。

検屍官 1992/01 MWA賞新人賞('91)CWA賞新人賞('90)
証拠死体 1992/07
遺留品 1993/01
真犯人 1993/12 CWA賞ゴールド・ダガー賞('93)
死体農場 1994/12
私刑 1995/12
死因 1996/12
接触 1997/12
業火 1998/12
警告 1999/12
審問 2000/12
黒蠅 2003/12
痕跡 2004/12

全作品、隅から隅まで読んでいる。書かれた順番に読まれたい。

どれも、平均点をクリアした、いいシリーズである。



シリーズを通しての登場人物は、

ケイ・スカッペータ    主人公の女検屍官
ピート・マリーノ     ケイに秘かに思いを寄せる刑事。ちょっと不器用だけど
               ケイのことをいつも心配している。
ルーシー・ファリネリ   ケイの姪で母の愛を受けずに育ったため気難しい一面も。
               しかしとても知的でFBIの専門Teamに所属
ベントン・ウェズリー   FBIの心理分析官。


サザエさんの家族は、歳をとらなくて永遠にあのままであるが、

このシリーズの登場人物は、歳を重ねている。


上に書いた登場人物のプロフィールは、今(最新刊「痕跡」)では、

まったく異なったものとなっている。


主人公のケイは私と同じ50歳代前半である。

私的には、彼女のイメージは、ヒラリー・クリントンである。

初期の頃乗っていたホンダから、今はメルセデスに変わっているし、

タバコも止めてしまった。


ルーシーも、今や大金持ちになって、フェラーリを2台所有。

ヘリコプターだって保有している。




ウェズリーはどうだったか忘れたが、

ケイ、ルーシー、マリーノの3人は、

いわゆるWASP(ホワイト、アングロ・サクソンプロテスタント)ではない。


また、マリーノ以外は、優秀な成功者で、ケイとルーシーは女である。

WASPではなく、女である、成功者だから、二人への世間の目は厳しい。

だから、二人の心は乱れに乱れ、ぼろぼろになるまで仕事に没頭する。


作者コーンウェル自身も、WASPではなく、女である成功者だから、

彼女たちのある部分は、自分の分身なのかもしれない。



犯人も含め、彼ら4人を取り巻く数々の登場人物たちとの人間模様が、面白い。

人間がよく描かれている。


もちろん、ミステリーとしての要素も満喫できる。

実に綿密に進められる、科学的な検屍は、人体そのものだけが対象ではない。

それに付着した全てのものが証拠となって犯人を追い求めていく。

これは、女に向いている仕事かもしれない。


ケイは、心が乱れてぼろぼろになっても、犯人を挙げるまで決してあきらめない、

誰にも止められないのである。


作者のコーンウェルでさえ、彼女を鎮めることは出来ないのである。