遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

突破者/宮崎 学

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グリコ・森永事件で、唯一目撃された犯人「キツネ目の男」。

この、キツネ目の男に限りなく似ていると、当局から目を付けられたのが、

「突破者(とっぱもの)」の著者、宮崎学である。


突破者―戦後史の陰を駆け抜けた50年〈上・下〉 幻冬舎アウトロー文庫
宮崎 学 (著) 価格: 各¥600 (税込)


宮崎は、京都生まれの、ヤクザの倅。

早稲田に進んで、学生時代は全共闘と対立するバリバリの活動家。

事件当時は、金に困っていると思しきアウトローだった。


犯人の似顔絵と似ているということに加えて、

上述の如く、関西に土地勘のあるアウトローだという状況が揃うと、

関西を舞台に繰り広げられたグリコ・森永事件の容疑者に仕立てられても、

いたし方のないことか。


私は、彼の「突破者」を大変面白く読んだ。


京都での幼少の頃のはなし、早稲田での活動家時代の話、

(当時早稲田に在籍中の、若き日の久米宏もチラッと登場する)

週刊誌記者の時代のはなし、京都での家業を継いでからのヤバイ話。

作られた小説のように、否、それ以上にすこぶる面白かった。


この時期、女性誌や「隠れ家」誌は、京都特集で部数を伸ばそうとしている。

女性誌に紹介されるまでもなく、京都の秋は世界一美しい、私が保証する。

京都というところは、さすがに伝統と格式のある素晴らしい土地だが、

そこ出身のアウトローも、確かに品性があるのである。



目次
《上巻》

1 マイ・ファミリー
2 少年鉄砲玉
3 喧嘩と資本論
4 都の西北とインター
5 秘密ゲバルト部隊
6 突撃記者の群れ
7 掟破りの日々

《下巻》

1 金地獄に踊る
2 ゼネコン恐喝
3 悪党の情と非情
4 キツネ目の男
5 銃弾の味
6 野郎どもとバブル
7 葬られてたまるか


この本の目次を目で追うだけで、おおよその内容は想像に難くない。

ナマの迫力が、力強い筆致で迫ってくる。

ヤバイ男のヤバイ生活観がみなぎった「良書」である。



宮崎はさまざまな場面で、宮台真司と一緒に、この国はヤバイと発信し続けている。

私は、この宮宮コンビの感性から打ち鳴らされる警鐘は、見過ごせないと思っている。



「突破者」は、このたび、なんと英訳された。

タイトルは、

Toppamono: Outlaw, Radical, Suspect - My Life In Japan's Underworld

である。誰に向けたものだろう。

(画像は、その英訳本のものである。私が読んだものの装丁に近いので使用した。)


日本語・英語、お好きな方でぜひご一読あれ。