遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

椿三十郎/黒澤明

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製作●田中友幸菊島隆三 
原作●山本周五郎 
脚本●菊島隆三小国英雄/黒澤 明
音楽●佐藤 勝 
監督●黒澤明

出演●三船敏郎仲代達矢加山雄三/団 令子/志村 喬/田中邦衛小林桂樹 ほか

「用心棒」が大ヒットした翌年、山本周五郎「日々平安」を基に黒澤明が作った、
名作「椿三十郎」。

周五郎の小説「日々平安」がどんな内容なのかは知らない。

この映画は「用心棒」の続編という位置づけであるが、主人公が同じである以外は、
何の脈絡もない。

どちらから観ても、無問題。

三船は、相変わらずこの映画でもどこをどう切ってもかっこよくて、
非の打ちどころのない浪人侍を演じ切っている。


三船敏郎の葬儀の弔辞(黒澤久雄が慟哭しながら代読)で、黒澤明は、

「こんなつらい思いをしたことはない。君とともに日本映画の黄金時代を築き上げた。
その時私が撮った作品は君なしでは作れなかったものだ。」

と言っている。

代読の久雄の慟哭は、父親の心情がよく解っていたのであろう。

黒澤は、三船が好きで・可愛くて仕方なかったんだろうなぁ。

でも、自分のもとを去っていったときに、黒澤の内で三船はすでに逝ってたのだろうなぁ。

いずれにしろ、この二人がタッグを組んだ映画は、世界最強である。

キャストがまったく同じで「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」「隠し砦の三悪人
「蜘蛛の巣城」「酔いどれ天使」「羅生門」「天国と地獄」「赤ひげ」
を、違う人がメガホン取っても、今に残る名作にはならなかったように思う。

また、上記の映画に三船が出ていなかったら……、それも答えは同じだと思う。
三船だけは、代役を見つけるのは不可能だろう。


異議ありの声があるので、お聞きするが、では三船の代役は誰がいいとお思いか?

市川雷蔵勝新太郎鶴田浩二高倉健石原裕次郎・小林明・宍戸錠赤木圭一郎
佐田啓二丹波哲郎・仲代達也・山崎努松田優作若山富三郎萬屋錦之助
田宮次郎・田村高弘・三国連太郎片岡千恵蔵森繁久弥…きりがないが、何か足りない。

渡辺謙ならいい線いくかもしれないが。
三十郎は演れても、「七人の侍」の菊千代は難しい。


この映画で、若き日の加山雄三田中邦衛が、「青い役」を好演している。

後年の「若大将&青大将シリーズ」でのお二人は、「青い」地のままであったが…。
(あれはあれで楽しめたのだけど。)


小林圭樹のコミカルな役は、きっと映画館で笑いが起こったであろうし、
入江たか子の奥方役が、なんとも微笑ましい存在感があった。


そして何よりも、繰り返しになるが、

黒澤明が監督をしたからこそ、名作が出来上がった。